特定技能1号の在留資格で外国人を雇用する企業(=特定技能所属機関)には、法令で厳格な基準が定められています。
この記事では、入管法第2条の5第3項および特定技能基準省令第2条に基づき、企業側が遵守すべき要件をわかりやすく整理します。
外国人雇用を行う企業担当者や行政書士、監理団体の方は必読です。


入管法第2条の5第3項とは?

入管法第2条の5第3項では、特定技能所属機関(=外国人を雇用する企業)は、次の2つの事項が確保されるよう法務省令で定める基準に適合している必要があると定められています。

  • 第1号:特定技能雇用契約の適正な履行
  • 第2号:1号特定技能外国人支援計画の適正な実施

つまり、雇用契約を守る能力と、外国人を適切に支援する体制の2つが整っていなければ、特定技能外国人を受け入れることはできません。


【第1項】特定技能雇用契約の適正な履行に関する基準(省令第2条第1項)

1.法令遵守

労働基準法・社会保険・租税関連などの法令を遵守していることが前提です。
コンプライアンス違反や未加入状態では、特定技能の受入れは認められません。

2.不当な離職の防止

契約締結の日前1年以内または締結後に、同種業務の日本人労働者を不当に離職させていないこと。
ただし、以下のような正当な理由による退職は除かれます。

  • 定年や契約満了による退職
  • 本人の責めに帰すべき理由による解雇
  • 自己都合による退職

3.行方不明者の発生防止

企業の責めに帰すべき理由で、過去1年以内に外国人が行方不明となっていないこと。
受入れ体制のずさんさや支援不足による失踪があると、所属機関の信頼性を大きく損ねます。

4.欠格事由(罰則・違法行為等)のないこと

所属機関またはその役員が、以下のような事由に該当していないことが求められます。

  • 禁固以上の刑を受け、5年以内に刑期を終えていない者
  • 労働基準法、職業安定法、雇用保険法などで罰金刑を受け、5年を経過していない者
  • 暴力団関係・暴行・監禁などの不法行為を行った者
  • 破産し、復権を得ていない者
  • 技能実習法に基づく認定取消から5年以内の者
  • 過去5年以内に入管法・労働関係法令違反など不正行為を行った者

このような違反歴がある企業は、「特定技能所属機関」として認められません。

5.文書保存義務

特定技能雇用契約に関する書類を、契約終了後1年以上保存すること。
これは、後日の監査や在留資格更新審査の際に確認される重要事項です。

6.保証金・違約金の禁止

外国人本人やその家族等が、保証金の支払いや不当な違約金契約を結んでいる場合は、所属機関はその事実を認識した上で契約を結んではいけません。
また、企業自身も外国人との間で違約金契約などの不当な金銭授受を行ってはいけません。

7.支援費用の本人負担禁止

特定技能外国人支援に要する費用は、企業(所属機関)が全額負担する必要があります。
外国人本人に直接・間接的に費用を負担させることは禁止されています。

8.派遣先機関に関する要件

派遣型で外国人を受け入れる場合は、派遣元・派遣先ともに一定の基準を満たす必要があります。
特に、産業分野を所管する行政機関との協議が求められます。


【第2項】1号特定技能外国人支援計画の適正な実施(省令第2条第2項)

1.支援実績・体制の確保

過去2年間に中長期在留者を適切に受け入れた実績があり、かつ、支援責任者・支援担当者を事業所ごとに選任していることが必要です。
また、支援担当者は外国人と意思疎通が可能な言語能力を有している必要があります。

2.多言語対応体制

支援内容(生活ガイダンス、職業相談など)を、外国人が理解できる言語で行える体制を整えておくこと。
ベトナム語・インドネシア語・英語など、母国語での対応が基本です。

3.支援記録の保存

支援の実施状況を記録した書類を、契約終了日から1年以上保存しておくこと。

4.中立な立場による支援

支援責任者および担当者は、外国人を直接監督する立場にないこと、また、欠格事由(暴力団関係や法令違反など)に該当しないことが求められます。

5.支援義務違反のないこと

過去5年間に、支援計画の不履行(特定技能支援を怠った事例)がないことも条件です。

6.定期的な面談体制

支援責任者または担当者が、外国人本人およびその上司と定期的に面談できる体制を持つこと。
これは、職場定着とトラブル防止の観点から極めて重要です。

7.産業分野別の追加基準

分野別に告示で定められる追加基準がある場合、それに適合している必要があります。
(例:外食業・介護・建設などは、特別な支援体制や報告義務が設けられています。)


まとめ:法令遵守と支援体制の両立が所属機関の信頼を高める

特定技能制度において、所属機関の適正性は最も重要な審査項目です。
法令違反や支援体制の欠如があれば、ビザ不許可や受入停止となるリスクがあります。

入管法第2条の5および省令第2条の内容を正しく理解し、適正な雇用と支援を実現することが、企業の信頼性向上につながります。

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